信長の野望・全国版――戦国の風を感じる名作シミュレーションゲーム

戦国時代に自らの意志を投じる、もう一つの日本史体験

1986年に光栄（現コーエーテクモゲームス）より発売された『信長の野望・全国版』は、国産戦略シミュレーションゲームの金字塔として多くのプレイヤーに強い印象を残した作品である。戦国時代を舞台に、最大の一人化して全国統一を目指すというコンセプトは、当時としては進歩だった。

『信長の野望・全国版』の最大の魅力は、プレイヤーが信長だけでなく、当時の堅守達の中から好きなキャラクターを選択できることにある。上杉謙信、武田信玄、毛利元就、島津貴久など、日本史に名を残して戦国武将たちを操り、自分なりの「天下統一」への道を選べる。

各大名には独自の余裕、兵力、経済力が設定されており、開始時の戦略は立ち上がり千差万別。周囲に強敵がひしめく中部地方と、相対的に平和な南九州では戦略も全く異なる。

本作では、ただ戦争を思い出して勝利するだけでは全国制覇は結果を残せない。内政や商業によって国力を蓄え、一時の支援を得ることも必要だ。

外交においては、隣国との同盟や援軍のような依頼の選択が戦闘局に大きく影響する。

軍事面では、兵数だけでなく士気や兵糧、戦場の地形なども勝敗を兼ねる。戦闘はターン制のシンプルなシステムながら、敵軍の裏をかいた機動力や地形を協議した戦略によって、小国が大国に勝利する逆転劇も可能だ。

今回のゲーム環境は、対戦のような家庭用ゲーム機よりも、PC-8801やPC-9801のようなパソコンタイトルの複雑なゲーム設計が可能だった。

現在の感覚ではグラフィックは非常に簡素だが、数字や表で国の状態を把握し、理詰めで状況を分析する面白さは、この作品ならではの「頭脳戦」として高く評価される。

『全国版』は永久ゲームに終了せず、プレイヤーに歴史の知識や地政学的感覚をもたらしてくれる点でも優れていた。

また、登場する大名や将軍たちの実在感、合戦の歴史や基本的な背景も、プレイヤーの知的好奇心を刺激する。結果として、このゲームをきっかけに歴史に興味を持ち、日本史を学び直したというユーザーも少ない。

『信長の野望・全国版』は、シリーズの中でもバランスのとれた作品であり、後の作品に大きな影響を与えた。

今年ではリメイクやスマートフォン版の登場なども進んでおり、昔のファンだけでなく、若い世代にも体験される機会が多々ある。

『信長の野望・全国版』は、戦国時代のダイナミズムと、人間の欲望と知恵が交差する時代の背景を見事に再現した名作である。もし未プレイなら、ぜひ一度体験してみてほしい。